別アングル 小竹康裕 episode.2

別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。

小竹康裕

柏崎市出身。株式会社juraice 代表取締役。
市内高校を卒業後、飲食店開業を目指し新潟市で修行。
同時にインターネットで通販事業を開始。
柏崎に拠点を移し通販の事業所を設立。
2023年6月に地域活動支援センターから就労までの一体型施設をオープン予定。

インターネットに魅了されながらもそれを仕事にしなかったのは、やはりまだよくわからない世界のものだったから。
実態がわからないし、どこまでいけるかも不鮮明。
結婚して子どもを養っていくということは相手の両親や周りも巻き込んでいくこと。 責任がある。
だからインターネットは本業にはこのとき選べなかった。

それでも、売り上げが上がっていくインターネットの仕事にどんどんはまっていった。
一個仕入れて登録したら売れたから、じゃあ三つ仕入れて売ってみよう。
三つとも売れたから、次は5個10個20個…という風に。
最初の一つは半信半疑だったけど、物が売れるにつれて徐々に手ごたえを感じた。

熱に浮かされるような…。インターネットの世界がうまくいくか否か、そんなことは知らないけど。
鳶の仕事もやめて副業を本業にした。
物を仕入れて販売するサイトのコードを書いて商品発送して。24時間仕事のことが頭の中にある。
夢の中でも働く感覚。奥さんも一緒になって仕事をしてくれた。

仕事も軌道に乗り安定してきたところで、新潟市から柏崎市に戻ってくることにした。
両親も柏崎にいるからいずれは戻りたい気持ちもあった。
当時は20代後半。地元の友達はみんな仕事をしながら楽しそうに遊んでいる。
友達にも会いたい。 子どもが小学校に入るタイミングで柏崎に家を購入、事務所も開設した。

柏崎に戻ってから数年、仕事は順調そのもの。
人を8人ほど雇い、売上がどんどん上がっていく。
とにかく売り上げを伸ばす、一位を目指す。
他を蹴り落してでも上に行く。
このとき、インターネット上に販売店を何個も作っていた。
1つのお店は月商が数千万円を達成。年商にすると3憶くらいになる。
カテゴリー別では日本一の売り上げだ。

しかし出る杭は打たれる。それも見事なまでに打たれる。
売上がピークのとき。
トラブルに巻き込まれ、稼ぎ頭のお店が閉店に追い込まれる。
それだけの売り上げがあるということは、借り入れを起こして仕入れをしている。
売上がなくなって負債がふりかかってくる。 雇っていた従業員はほぼ解雇。

インターネット店舗の怖いところは、一晩でお店がなくなるところ。
実店舗なら閉店になっても店舗や看板、お店の什器がある。
しかし、インターネットは閉鎖となればクリックひとつでお店は跡形もなくなる。
日本一の売り上げだった店が翌日には目の前からなくなる。
落差がすごい。

悪夢だった。
10年間頑張ってきたものが全てなくなる。
億単位の負債を抱え、稼ぎ頭を失い「自己破産」の文字がちらつく。
住む家を失うかもしれない。子どもは中学に上がったばかりだ。
ガクガク震えた。誇張ではなく本当に身体が震えるんだ。
震えて涙が出て夜も寝られない。

そうは言っても俺は会社の代表だからトラブルの後処理や生き残ったお店の仕事がある。
震える身体をなんとか動かして目の前のことをこなす。
そんなどん底を支えてくれたのは妻だ。
「大丈夫!なんとかなるから」 と言って奮い立たせてくれる。

きっと自分も辛かっただろう。
実際はなんとかなるなんて思ってなかったかもしれない。
けどそれを認めてしまえば終わってしまうからポジティブにふるまってくれたのかな。
もともとの性格は、俺はポジティブでイケイケ状態。反対に妻は慎重派でよく考えて行動するというか、俺のストッパー役。そんな妻がその時は底力だった。

底にまで沈んだら後は昇るだけ。
残ったお店は売上が立つ。
閉鎖したお店も売れてるから杭を打たれた。
売れなくて潰れたんじゃない。
売り方はわかっている。
そこからガムシャラに会社を立て直した。 半年後には従業員も呼び戻せた。

episode.3へ続く

photo:ヒロスイ

2023年4月12日 17:44

カテゴリー / まちから

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投稿者 / yajima