別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。
西倉里菜
柏崎市西山出身。市内デザイン事務所に在籍。
柏崎セントラルビーチの壁画を手掛ける。
プライベートでも絵やモノづくりなど意欲的に制作活動を行う。

田んぼも嫌いじゃないし、家族とわいわい話すのは好き。
土日の田んぼもコミュニティーセンターの用事も私にとっては大事なコト。
けれど本当は自分のやりたいことがある。
集中して絵を描き、物を作りたい。
そんな環境を作るため実家を出て一人暮らしを始めた。
いまは限られた時間の中で、没頭して制作活動をしているよ!

こんな私でも、このまちを出ようと思ったことがある。
きっかけは岩手県にある南部鉄器との出会い。
ある時、鉄鍋を調べていてたまたま「及富(おいとみ)」という工房に出会ったの。
いろんな南部鉄器の工房がある中で及富のデザインにすごく惹かれた。
南部鉄器は全体的にゴージャスなものが多いのだけど、及富のものは地味だった。
けどそれがカッコよくて!!
好きすぎて欲しくて現地まで行ったの。
軽トラで下道走らせて。

及富の人とおしゃべりもできてほしいものも買えた。
職人さんはかっこいいし、どんどん好きになっていった。
及富があるまち、岩手県奥州市は何となく柏崎に雰囲気が似ている。
都会でもないけど、田舎過ぎもしない。
けれどモノづくりや手仕事を大切にしている奥州市というまち。
及富にもその工房のある街にも心惹かれていった。
そのころ、ちょうど柏崎での暮らしに疑問を持ち始めていた。
自分の年齢が30歳前後というタイミング。転職や環境を変えるには今しかないかもって思った。
実家の田んぼもお父さんが定年退職するときだったから、私はいなくても平気かなって。
岩手に行って今と同じ仕事をする。軽トラも持ってるから農業の手伝いもできる。
大好きな及富があるまちで暮らそうと思い始めた。
そう考えるとさっそく現地の移住マッチングサイトに登録。Zoomで相談にも乗ってもらったよ。引っ越し費用を貯めるのに設定した期間は2年間。時期が来たら私は柏崎を出て岩手に行く。

周りの友達や会社の社長、家族にも意志を伝えた。
この時の私は身の回りを全部捨てて岩手に行くつもりだった。
家族は「ふーん」ってリアクション。
私はどんどん計画を進めていった。
当時付き合っていた大好きな彼氏にも意志を伝える。
その時、彼氏は「行かないでほしい」って言ったの。
意外だった。その人と結婚も考えてもいなかった。
彼氏に言われ私は岩手行きを考え直すことにした。
そうは言っても柏崎や今の環境から気持ちが離れてしまっている。
だから私がここにいる為に、何ができるか考えたの。
私は足元の環境を見直すことにした。
周りのひとに言いたいことを言って想いを伝えた。
移住を決断した時、自分の行動でいろいろなものが壊れることが分かった。
けど壊れることを恐れて自分の意志を殺したのでは自己犠牲になってしまう。
それじゃダメなんだ。

みんなと話して自分の気持ちを伝えて足元を見直すと、気持ちが大丈夫になった。
このまちにまだいられるって思えるようになった。
岩手行きをやめたことをお父さんに伝えると大喜び。
本当は寂しかったんだね!
そして、「行かないで」と言ってくれた彼氏とは来月、結婚するよ!
生まれ育った西山とここに住んでる人たちが大好き!
周りの人を楽しませて、自分自身も楽しんで生きていきたい。
絵を描いて物を作ってお米を作りながら、ずーっとね。
photo:ヒロスイ