別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます
佐藤 友理
柏崎市出身。FMピッカラで活動する地域おこし協力隊。
市内高校を卒業後、歌手を目指し上京。
歌手活動と並行してラジオパーソナリティを務める。
2022年10月、柏崎市にUターン。
FMピッカラでラジオパーソナリティを務め、コミュニティ放送を活用した情報発信を行う。

ハードなバレー部を引退した私に残ったもの。
辛いことがあっても並大抵のことじゃ諦めない気合と根性。
戦友のような仲間。
そして常に私の傍らにあった「歌を歌う」ということ。

高校を卒業したら歌手の道に進みたい。
けれど学校ではバレー部だったし、友達にも歌のことは話したことがない。
エイベックスアーティストアカデミーというスクールに入りたかったのだけど、誰にも言えずにいた。
当時テレビで放送されていたオーディション番組。
歌手やアイドル希望の子が番組内でレッスンを受けオーディションへと進んでいくサクセスストーリー。
私も番組のオーディションに応募したくて放送を見ても…。
東京で収録された番組は柏崎で放送されるときには
「この番組は関東地区で○月×日に放送されたものです」
となっている。
番組を見るころ、オーディションは数か月も前に終わっている。
柏崎の本屋さんでオーディション情報雑誌を探してみても見当たらない。
柏崎にいては歌手になる道がない。
早くこの町を出て東京に行きたい。

そうは思うんだけど、なかなかエイベックスに入りたいと言えずにいた。
結局、入りたくもない企業の採用面接を受ける。
身が入っていないから当然落ちる。
まわりのみんなが進路を決定していくなかで、進路が決まっていないのは残り数人になる。
「進路が決まらない最後の一人になるのはいやだな…」
ここで初めて勇気を出して先生にエイベックスの話をした。
親は私のために貯金をしてくれていた。
高校卒業して地元に就職した時、私が車を買えるようにって。
アカデミーの入学金と1年目の学費は親の貯金から出してもらった。
アカデミーのレッスンは週に一回。
東京でアパートを借りて住むのと、実家に住んで柏崎から高速バスで通うのと計算をしたら後者の方が安い。
20歳までにお金を貯めて、東京に出ていくことを目標として、まずは柏崎でバイトをしながら週一でアカデミーに通うことを決める。

週一で東京に通う生活が始まった。
バスは朝昼夜に一本ずつ、一日に三本しかない。
昼に柏崎を出て夕方東京に着いてレッスンを受ける。
レッスン後はバスが出る深夜まで待つ。
最初は友達もいなかったから一生懸命時間を潰していた。
徐々に友達が出来てバスで通っていることを伝えると
「えー、このあと新潟に帰るの!?やばいね」
「なんでそんなことしてるの!?」
なんて言われる。
でもインパクトがあったのか結構覚えてもらえたりして。
レッスン後に友達と一緒に行ったファミレスでの会話が盛り上がりすぎて、バスを逃したことがある。アカデミーのある原宿でギリギリまで友達と話して、山手線でバスが出る池袋に向かう。
山手線が遅延している。電車が復旧して池袋に着いたもののバスは出てしまっている。
手持ちのお金も少なく、帰りのバス代もまた出さなければいけない。
携帯の充電も残りわずか。
警察に相談に行くと安く寝られるサウナを紹介してくれた。
帰る手段のない東京の夜、サウナの休憩室に行くと知らないおばさんたちがたくさん雑魚寝している。 眠れない夜を過ごして翌朝始発のバスで柏崎に帰った。
アカデミーに通い始めて一年。
この道を決めた時に思い描いていた
「20歳で上京」
の期日が迫ってくる。
episode.3へ続く
photo:ヒロスイ