別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。
小林 麻里
柏崎市出身。MARI DOG SALON代表。
トリマー専門学校を卒業後、マカオ、ハワイでトリマーとして働く。
帰国後、自宅を改装しMARI DOG SALONをオープン。
トリミングのほかに、パラコードのアクセサリー作り、ビーチマネーの取り組みなどを行う。

普通、「海外」っていうとアメリカやヨーロッパに憧れる人が多いよね。
私もマカオってどこかわからなかったし。
でもあえて誰も行かないところに行くって面白いなって思って。
マカオでの生活は最初っから大変だった。
大好きな英語は高校で習っていたはずなのに、いざ話す場になると
「センキュー」「ハロー」
くらいしか出てこない。
そもそもマカオで話されている言語は広東語。
英語も話せない、ましてや広東語なんて…。
マカオに着いて数か月でペットショップのマネージャーになったから、指導者として従業員と会話もしなければいけない。
高い高い言葉のカベ。
スタッフのYくんは広東語しか喋れない。
スタッフのCさんはポルトガル語、広東語、英語が喋れる。
Yくんに言いたいことがある時は、日本語で書き出して電子辞書で英語を調べながら文章にして、まずCさんに伝える。
それを伝言ゲームの様にYくんに伝えてもらう。
仕事の姿勢も全然違う。
お客さんが来ない暇な日は、遊んでいいみたいな感覚がある。
ゲームしたり買い物したり帰っちゃったり。
日本人は勤勉だから。
「仕事としてお金もらってるんだから、そんなことしちゃだめでしょ」
と注意するとブチ切れる。
「今日は予約も無くてお客さんも来ないから掃除をしましょう」とバイトの子に言うと、次の日に来なくなってしまう。
「マリに掃除をさせられたと言って、退職してしまったよ」
そんなことが何回もあった。

ある日、スタッフが嫌がる犬を、すごい力づくで押さえながらトリミングしていた。
犬は噛んだり、暴れたり、大変な感じ。
見かねて私が手を出す。
なだめながらトリミングすると、噛まずに穏やかにいい子でいてくれる。
「マリ、すごい!!あの暴れる犬がイイ子でトリミングされてる!」
その日から徐々にスタッフの態度も変わっていった。
マカオは狭い。
日本式のペットショップは一店舗のみ。
私はマカオでトリマーとして有名になった。
みんなが「マリ!マリ!」と言って芸能人の様に扱ってくれる。

それはそれで嬉しいんだけど…。
東京をはじめ、世界にはもっとすごい技術者がいっぱいいる。
私なんてまだまだちっぽけなハズ。
ここでチヤホヤされて満足しているのではだめだなって思って。
マカオを出て、次に行くことを決めた。
マカオで覚えた英語がアメリカで通じるのか試したい思いもあったし、やっぱり英語の本場に行きたい気持ちもあった。
求人を探していたところハワイでトリマー募集の記事が。
「ハワイもアメリカでしょ!」ってことで、新しい職場はハワイに。
ハワイ!
誰もが一度は憧れるハワイ。
ハワイに住みながら働けるなんて。
ハワイの人は気軽に声をかけてくれるし、みんな優しいし。
日本人の女の子はモテるから、ナンパが多くて、それはちょっと面倒くさいけど。
ハワイでトリマーとして働く傍ら、パラコードのアクセサリー作りも始めた。
日本ではあまりポピュラーではないんだけど、ハワイではパラコードグッズをよく見かける。
趣味で犬にパラコードのリードや首輪を作ってあげた。

ハワイで住んでいた時に出会ったのが今の旦那さん。
ビザが切れて日本に帰って来てからしばらくして彼が日本にやってきて結婚したの。
柏崎の不動産屋で売りに出ていた物件を取得、彼がリフォームを進めて2021年2月にプライベートドッグサロン「MARI DOG SALON」をオープン。
パラコードもイベント出店を通じて徐々に手に取ってくれる人が増えてきた。

独立して雇用もせず、全部一人でやっていくのは大変。
けどやっぱり自分のやりたいようにやりたい。
人と違うことをするのも楽しいし、いままで働いてきた中で培ってきたものを、自分の集大成としてお店で実現できた。
もう一回英語の環境で暮らしたいという思いは頭の片隅にある。
子どもたちもせっかく2つの国の間の子どもだから、どっちの言葉も文化も学んでほしい。
しっかりお金を稼いでお金を貯めて。
いつかまた英語の国で暮らしたいな。
photo:ヒロスイ