別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。
小林 麻里
柏崎市出身。MARI DOG SALON代表。
トリマー専門学校を卒業後、マカオ、ハワイでトリマーとして働く。
帰国後、自宅を改装しMARI DOG SALONをオープン。
トリミングのほかに、パラコードのアクセサリー作り、ビーチマネーの取り組みなどを行う。

柏崎を出たかった。
もっといろんな世界を見てみたい。
この街を出られて柏崎よりは都会で、かつトリマー専門学校がある町。
数ある学校の中から仙台にあるトリマー専門学校を選んだ。
柏崎から離れ親元から離れ、知らないまちでの暮らしが始まる。
寮暮らしだったけど自由の身を謳歌した。
好きなことをなんでもやれる。
その代わり全部を自分でやらなきゃいけない。
親がどれだけ私に手を掛けてくれていたかも知ることが出来た。

専門学校で最初に習うのはハサミの使い方。
ハサミの位置は動かさないように、親指だけ動かしてカットしていく。
新聞紙の切れ端を等間隔で切るテストを課されるんだけど、これがなかなかクリアできない。
テストに受からなければ犬のカットに入れない。
課題をクリアして犬のカットに入ってもなかなか上手くいかない。
噛む犬もいて、すごく怖かった。
上手くできないときは先輩や先生がかわりにやってくれる。
「こんなに頑張っているのに、どうしてできないんだろう…」
涙を流す日もあった。
2年生に進学して後輩ができれば、かっこいいところを見せたい。
先生に褒めてもらいながら、徐々にカットができるようになっていった。

専門学校が終わってバイトが無い日は友達と遊ぶ。
いつも仲良しの4人組で、だれかが誕生日になるとみんなでお祝いどんちゃん騒ぎ。
お祝いするのは仙台駅の裏にあるモータウンカフェ。
誕生日の人が居ると店員の黒人が、ケーキ片手にハッピーバースデーを歌ってくれるの。
英語を話す外人さん、やっぱりかっこいいなぁ。
専門学校3年生で行った研修で初めて海外に行った。
ニューヨークで開催されるウェストミンスター・ケネルクラブ・ドッグショーを視察。
引率の先生は海外に10年くらい住んでいた人で、海外のノリが板に付いている。
現地の人と「Oh hello!」とか言いながらハグしている。
普通に英語をしゃべっている姿を見てメチャクチャカッコいいなって。
動物への考え方も日本とは違う。
「こんな世界があるんだ!いつか私も…!」
海外での暮らしに憧れが強まった。

専門学校を卒業した後は東京に行こうと考えていた。
上手なトリマーがいるお店、雑誌に載っている有名なお店、おしゃれなお店。
ミーハー心に憧れていた。
けれども有名店に入ると、下積みから始まる。
カットなんて、すぐはさせてもらえない。
初任給も低い。東京の高い家賃のことを考えると手元に残るお金はほとんど無い。
やっぱり東京に行ったなら遊びたいじゃない?
東京での願望をかなえるために、東京のトリマー専門学校へアシスタントとして就職することにした。
寮が完備されてて初任給も安くない。
「これなら遊べる!」って。

いざ働き始めると、仕事はかなり忙しかった。
授業の準備、生徒たちの採点、カットの後片づけに掃除。
定時に帰れることは無くて残業の毎日だった。
ストレスから休みの日は飲んでばかり。
朝まで飲んで動き始めた山手線に乗る。
電車の中で寝ちゃって、降りる駅で下車できずに通過する。
「ああ、降りそびれちゃった。まあいいや、このまま寝ながらもう一周しよ」
「この仕事もそろそろ潮時かもしれない」
4年ほど働いたころ、退職を考えた。
トリマーとして働きたいという思いが出てくる。
専門学校アシスタントの仕事は、生徒を指導すること。
お客さんと直接コミュニケーションすることはない。
生徒がカットして、できていないところを仕上げるから、自分は1からカットできない。
自分の技術が衰えていく気もしたし、直接お客さんとコミュニケーションをとって、お客さんが喜ぶ姿を見たい。
専門学校アシスタントを退職し、次の職場として選んだのは海外。
マカオのペットショップだ。
episode.3へ続く
photo:ヒロスイ