別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。
山田 華緒李
新潟県上越市生まれ。柏崎市矢田集落の地域おこし協力隊。
大学時代に、中国の少数民族が作る亮布(リャンプー)の制作・研究をする。
2020年9月から、地域おこし協力隊として矢田集落へ着任。
コミュニティ活動、住民と一体となった亮布作りを通じて地域商店の復活を目指す。

「君はおっとりした子だね」
小学校の音楽の授業でリコーダーを吹いた時のこと。
「リコーダーの音色から、みんながどんな子かわかる」
と言う音楽の先生。
私がリコーダーでワンフレーズ吹くと、先生からそんな風に言われた。
絵を描くのが好き。
小学校中学年のころ、みんなが読み始める少女漫画。
少女漫画に似せた絵を書いていた。

4歳年上の兄のまねをするのが好き。
兄がやっていた剣道を私もまねっこして始めた。
けれども剣道はあまり強くなれなくて。
それでも身体を動かしていれば体力がついてくる。
走るのが早くなって、中学では陸上部に所属した。
負けず嫌いな性格だから、速く走れるようになりたかった。
大会に出て結果も出せた。
陸上部には尊敬できる先輩もいたから陸上は頑張れた。
顧問の先生は怖かったけれど。
絵を書く時間は自然と少なくなっていった。

あれほどまねっこしていた兄は、反抗期で荒れてすこし距離が出来たけど。
反抗期が過ぎ、神戸に進学して家を離れてからは、家の中が静かになって。
今度は兄の帰省が楽しみになっていた。
性格も明るくなって私の勉強の面倒見てくれて、「頼りになる兄」って感じ。
偶然だけど、進学先の高校も兄が通った学校。
「高校入ったら絶対に陸上はやらない」
入学当初の思い通りにはならず、結局入った部活は陸上部だった。
顧問の先生は優しくて先輩たちには可愛がられて、とにかく居心地がいい。
授業受けて部活して宿題して休みの日は自主練して。
一緒にいる友達も部活の仲間。
話す内容も陸上のことばかり。
「今日の練習はキツかったね」なんていうのが、話題の中心になる。

「新潟を出たい」
部活を引退して卒業の進路を考える時、思ったこと。
ここは人との距離が近すぎる。
上越のスーパーに行けば、誰かしら知人に会う。
それが嫌で仕方ない。
誰も私のことを知らないところに行きたい。
具体的に何をしたいかは決まっていないけれど…。
友達は美大を目指していると言う。
「この子、そんなに絵を描いている感じでもないような…?」
聞いてみるとその友達が目指す美大の入試では、絵を書くか小論文を書くか選べるそうだ。
それなら私にもできそう。
高校の美術の先生の影響も大きい。
授業が始まる前、いつもアーティストの小話をしてくれる。
それが面白くて。
「先生みたいに美術の歴史やアーティストの生涯を語れたらいいな」
石川県にある金沢美術工芸大学に無事合格。
初めての一人暮らしで、県外に出る。
大学から歩いて20分のところにアパートを借りる。
「金沢」と言う響きに憧れもあった。
金沢には京都のような小径があって、お洒落な店があるの。
最初はワクワクしていた金沢での暮らしだったんだけど…。
他の大学が入学式を迎える中、金沢美術工芸大学の入学式は一週間くらい遅い。
知らないまちに一人でいると、だんだん寂しい気持ちになっちゃって。
友達もいないし、絵が得意じゃないというのも不安で。
泣きながら母親に電話した。
「ふっ」と苦笑いする母親。
「何泣いてるの。まだ学校始まってないじゃない」と慰めてくれる。
いざ大学が始まってみると、私と同じように絵が得意じゃない子もいて少し安心した。
episode.2へ続く
photo:ヒロスイ