柏崎市に現存し、令和の現在も続いている、歴史の長い企業や工房をご存知ですか?
まちからコーディネーターが調べた5社の皆様に、会社や工房の「歴史、変遷、今の思いとこれから」をテーマに伺いました。
身近な場所も日本や世界の歴史と比較すると、長く続くこと自体に価値を感じます。ですが、長く続けられているのには理由があります。
第3回は「原酒造 株式会社」様です。
賢者は歴史に学ぶ。
柏崎の生活や社会に溶け込んだ悠久の歴史と、今を生きる柔軟な方々のマインドに触れてみて下さい。
原酒造株式会社




創業は江戸時代の後期。柏崎で200年以上続く酒蔵です。現社長の原吉隆さんで7代目となります。
昭和25年に株式会社となり、5代目の原哲郎さんが初代社長。その当時、4代目であった原吉郎さんは初代柏崎市長です。名実ともに柏崎とともに歩んだ歴史があります。
ー創業した場所について
場所は200年間変わっていません。柏崎のまちなか、新橋で酒を作り続けてきました。
実は明治44年に起きた柏崎大火の被害で、建物も資料もほぼ全て焼けています。なので過去を示す資料がほとんど残っていないのです。

唯一、当時を伝える写真があります。4代目の原吉郎さんが写っていますね。柏崎大火の後にちょうど蔵を再建しているところです。
この頃に再建した蔵も含めて、平成19年の中越沖地震で7割近くの建物が全壊しました。残念なことでしたが、そういった火事や天災に遭っても復興してきたのが今の原酒造です。
ー創業からの変遷
始まりは原酒造の初代となる、原幸太郎さんが家族に当時の家督を渡し、酒造りを始めました。なぜ酒造りを始めたのか、その理由はわかりません。

酒造りは江戸時代の後期から始まりましたが、もともとは鍋や窯の修理製造を行う、鋳物師屋を行っていました。
原酒造の建物に「まるな」と書かれていますが、屋号を「なべや」と言い、鋳物師屋の時の屋号を受け継いでいます。
根っこは原惣右エ門さんと一緒かもしれませんね。
明治に入り、柏崎大火のあった頃は4代目の原吉郎さんが酒造りをしていました。ですが、大火の被害に遭ったり、タイミング悪く取引銀行が破産したりと、悪いことが重なった時期でした。吉郎さんは廃業するか悩んだと伝わっています。
また、吉郎さん自身もお酒というものにマイナスの面もあると悩んでいたそうです。飲み過ぎれば体を壊したり、酔い過ぎれば喧嘩や諍いが起きたり。そういうものに関わることが良いことなのか、自問を繰り返していました。
そんな時、4代目の取った道はお寺に籠ることでした。ご近所の極楽寺に高明な弁栄聖人が訪れていた時に弟子入りをします。必死に修行し、お酒はマイナスの部分もあるけど、この世に必要なもの。悲しい時に慰めたり、嬉しい時は何倍も盛り上げたりするものだと悟ったそうです。
それからは原酒造の復興に力を注ぎました。昭和初期頃は周りから押していただき衆議院議員となり、昭和15年には柏崎市の初代市長となります。昭和25年には株式会社となり、5代目の原哲郎さんが社長となりました。
4代目のことは良く聞かされてきました。
ある時、長野方面に登山に行った時、諸国を回る修行僧が近づいてきて拝み始めたそうです。いぶかしがって何をしているのか聞いたところ、あなたほど得の高い人はいないと拝んでいたようです。ちょっと常人離れしていたという逸話が伝わっています。そういうこともあり、ずいぶん立派な方だったと教えられてきました。

5代目は復興の時代です。戦争もあり、生活が大変厳しいものでした。お金に厳しかったと記憶しています。
6代目は近代化を計り、蔵人を年中雇用に切り替えたり、販路拡大と順調にやってきましたが若くして亡くなります。
その当時は社員一丸で会社を支えて、現在は私が7代目となりました。
過去に色々な出来事がありましたが、私自身も中越沖地震という大きな経験しました。
地震で普段使っている事務所が潰れてしまったのですが、この日は会社の休みを頂いていて、誰もいなかったので命が助かりました。このことは運命だったと感じています。
会社としての被害は大きかったけれど、人的被害がなく本当に良かった。
地域の方々からも大変助けてもらい、いつかは恩返ししたいと強く感じています。今もそう思っているのですが、あまりにも多くの方から恩を頂いているのでお返ししきれていませんね。
ご近所の方だと、白百合カトリック幼稚園の皆様が私たちのために炊き出しをしてくれました。その時はご好意を甘んじて受けさせてもらい、2週間続けて炊き出しを頂いた後、お礼に伺いました。
ー現在の仕事と、これからについて
現在の仕事は日本酒の製造販売が主力です。また、甘酒や梅酒などリキュールの製造も行っています。甘酒は栄養価が高くて飲む点滴と言われていますね。一時期はブームにもなっていましたが、今は根強いファンに支えられて販売を続けています。
これからは高品質メーカーとして輸出も視野に展開したいと夢を持っています。ポテンシャルはあると思っているので、まずは今の感染症渦の時代をどう凌ぐかが課題ですね。
地震を経験して、地酒メーカーは地域に支えられていると肌で実感しました。言葉ではいくらでも言えるのですが、私の場合は実体験として考え方を作るものになっています。
そういう思いもあり、酒彩館という開かれたお店を作りました。多目的ホールを併設して、講演会や音楽イベントなどにも利用してもらっています。フラメンコのコンサートなんかもしましたよ。一般の方に酒屋の敷居が高い、と思われているのはさびしい。酒屋や酒蔵に人が集まって、情報を発信していくことが必要と感じています。非日常的な空間を作って、酒蔵や酒屋が楽しい場所になっていくと良いですね。

地震、雷、火事、親父という昔ながらの言葉がありますが、原酒造も私も雷以外は経験をしました。親父も本当に怖かった。
その度に復興してきたのが歴史です。
いずれは感染症の状況も落ち着くでしょう。私たちは、その先のことを見据えながらやっていきたいと思います。
問い合わせ先
原酒造 株式会社
TEL:0257-23-6221(本社) 0257-23-3831(酒彩館)
MAIL:hara@basil.ocn.ne.jp
WEB:http://www.harashuzou.com
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