柏崎市に現存し、令和の現在も続いている、歴史の長い企業や工房をご存知ですか?
まちからコーディネーターが調べた5社の皆様に、会社や工房の「歴史、変遷、今の思いとこれから」をテーマに伺いました。
身近な場所も日本や世界の歴史と比較すると、長く続くこと自体に価値を感じます。ですが、長く続けられているのには理由があります。
第2回は「阿部酒造 株式会社」様です。
賢者は歴史に学ぶ。
柏崎の生活や社会に溶け込んだ悠久の歴史と、今を生きる柔軟な方々のマインドに触れてみて下さい。
阿部酒造株式会社




現在の社長が5代目。息子の阿部裕太さんが酒造の仕事を引継ぎ、6代目蔵元として酒造りを行っています。
代々「庄」の字を名前に引き継いで来ましたが、5代目が「6代目には自由にして欲しい」「時代の変化に合わせて欲しい」という願いを込めて「庄」の字を引き継がせませんでした。
そんな6代目が、時代に合わせた酒造りをしています。
ー創業した場所について
217年間変わらず、柏崎の安田に製造所を構えています。旧国道沿いに製造所が変わらない場所としてありますが、今は安田の国道291号線沿いに直売の店舗を構えて酒販もしています。
ー創業からの変遷
阿部酒造は200年前から清酒製造を続けてきました。
昭和から平成にかけて、新潟の酒は特に人気が高く飛ぶように売れた時代でした。ラベルの付いた酒瓶ですら売れることもあったようです。
そのような時代背景でちょうど平成に入るころ、酒を作らずに売る方へと舵を切ります。4代目の頃に清酒製造メーカーから酒販業に力を入れようとして店舗を構えました。
その後、30年ほど酒販に力を入れましたが、時代の変化とともに日本酒が飲まれなくなっていきました。それと合わせるように阿部酒造の体力も徐々に落ちていきます。

酒販、酒造りは今の時代に厳しい。
5代目からは自由にして良いと言われていました。ですが、私自身は会社員時代から酒造りがしたくて。会社員の頃から、計画的に新潟の農産物や飲食に関わる仕事についてましたね。
平成25年に東京から戻り、6代目蔵元として酒造りを始めました。
ただし最初は大変でした。再度、酒造りに力を入れようとした時は人も体力もない中で、柏崎の方々や企業にお世話になりました。特に原酒造の杜氏さんからは助けてもらい、他社の酒造蔵なのに人を送り込んでもらったりと助けていただきました。その時に、改めて酒造りに関わる人の懐の深さを感じます。
ー現在の仕事と、これからについて
私たちの酒造りは、製品の価値を高めて、酒屋に選ばれる努力を続けることに尽きます。プロダクトに圧倒的な熱量、人的リソースも加えて造っています。香りは少なく、酸味は多め、製造者の人数に対してできる酒の量は少ない。一般試験があれば、大バッテンをもらってしまうかもしれません。

ですが、酒は嗜好品。好きな人に刺さるように市場の声すらプロダクトに寄せられるように発信も行っています。
阿部酒造が目指しているのは、美味しいと思ってくれる人にしっかり届くこと。好きな人に選ばれることです。そのために、今を生きる自分たちがおいしいと思えるものに熱量を加えていくことが重要です。
これからの展望としては、酒造りはさらに力を入れていきます。日本酒にこだわりはありますが、他にもいろんなことをやっていきます。例えば最近だとクラウドファンディングでクラフトコーラを作りました。ただクラフトコーラを作ってみたかったのではなく、いろんな入り口を作りたかったんです。
日本酒だけを飲んで日本酒を好きになってもらうのではなく、たくさんある入り口から最終的に日本酒も好きになってもらうようにしていきたいですね。
地域にある酒蔵の役割は、地域から支えられながら、一緒に成長していくことが大事と感じています。ただ今の時代は酒だけで成長するのではなく、いろんなものを作りながら成長していきたい。
伝統産業の本質もそういうところにあると思います。ずっと同じことをするのが伝統ではない。時代によって変わる必要がある。昔のやり方全てを変えるのではなく、現代の形にうまく変えて伝えられるのが伝統的な産業に必要だと思っています。そして何かを変えられる環境を整えていくことも大事だと思います。

阿部酒造の製造所や蔵は誰も受け付けない、ちょっと遠い存在になっていました。これからは地元に寄り添うようにありたい。
そういう意味で交流拠点のような場所を具体的に作っていきます。同じテンションの人同士で街を作っていくイメージですね。もちろん自社だけではできないので、地域の人とやれるよう環境を整えていきます。
問い合わせ先
阿部酒造 株式会社
MAIL:abe.sake.brewery@gmail.com
WEB:https://www.abeshuzo.com
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