別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。
岩間 貴寛
東京都町田市生まれ。株式会社Dan、株式会社BOND代表。
横浜のWAEN dinning & hairsalon、HIBA by WAENを経営する。
柏崎市別俣にある古民家を買い取り、自ら改装して2021年7月にWAEN dinning & villaをオープン。今後、同じ建物で宿泊施設もオープン予定。
美容室開業に向けた資金を貯める。
目標は22歳になるまでの2年間。
選んだのは新規オープンした美容室での歩合制の働き方だった。
業務委託で基本給はゼロ、カットしたお客さんの数だけ報酬がもらえる。
毎日毎日、開店から閉店までとにかく働きまくった。
21歳で結婚もした。
結婚と独立、どっちもお金が必要だった。
どれくらいのお金があれば美容室が開業できるのかもわかっていない。
銀行に相談に行ってもお金を貸してくれない。
それでも諦めない。
うまくやれる方法を探し続けるだけだ。
独立目標に掲げている22歳が近づいてくる。
「借り手を探している物件があるよ」
状況が好転したきっかけはカットを担当したお客さんだった。
そのお客さんには開業の相談をしていたんだけど、とある物件をお勧めしてくれた。
それは横浜にある古民家だった。
商業用のテナントビルではないから、賃貸料や保証金も安い。
物件を紹介してくれた人は設計士だった。
その人から大工さんも紹介してもらって、古民家を美容室に改装する作業を自分たちでやった。
かなりコストを削減できたうえで準備を進められた。
自分で美容室をやるなら、かっこいいものをやりたい。
他とは違った、変わったことをやりたい。
当時奥さんは、保育園の栄養士をしていたから、カフェ併設の美容室にした。
カフェの運営を奥さんに任せる。
奥さんはまじめな性格でわりと保守的な性格だったから、すこし不安そうだったけど。
自分と奥さん、仲間の2人。半年間の準備を経てようやくオープンにこぎつける。
目標の通り、22歳での独立だ。
オープン初日。
カフェの仕込みをしながら、奥さんは朝から不安で泣いている。
「大丈夫だよ」
としか言えない。
実際はわからないけど。
独立してからもとにかく働きまくり、仲間の助けもあってある程度形になってきた。従業員も増えて売り上げも上がっていく。お店をリニューアルして客席を広げた。経営は順調だったから銀行もしっかりと融資してくれて。お店の機材や広告にどんどんお金を使っていったけど、このままいけば回収はできる。
リニューアルオープンは2020年3月。
これから！というときにコロナの緊急事態宣言が出る。
本当に人の量が圧倒的に減った。
投資したお金が思ったように回収できない。
それでもそのときは、なんとかなった。
ただ今後、またこういったことが起こらないとは言えない。
美容室一本で組織を大きくしていくのは限界があるし、リスクもある。
美容室でもっている自分のお客さんはスタッフに任せて、自分は新しいことを始めるほうがいい。お店にずっといて視野が狭くなっているとも感じていたし、好奇心旺盛な自分はこっちの動きの方があっている。
スタッフのマンパワーに頼らず拠点を分散させる。
地方に宿泊施設を作ることを思いついた。
古民家を自分たちで改装すれば初期投資も低く抑えられる。
地方の物件をネットで探す中で見つけたのが、柏崎の別俣にある物件。
2021年7月、WAEN dinning & villaをオープン。
オープニングスタッフは横浜の店舗のスタッフだった子に、柏崎に移住してもらって住み込みでやってもらっている。田舎暮らしや農業にも興味のある子だったから、「ぜひ行きたい」って言ってくれて。
好奇心を軸に動く自分に、自らのやりたいことを重ね合わせてくれるスタッフがいる。
好奇心が繋がって、ウィンウィンの関係になれるのはありがたいこと。
一つお店を作ったら全然違う町に行く。そこで物件を見つけて同じようにお店を作ってを繰り返して、いろんな地方に行こう。この町に来たときはそんな風に思っていた。
別俣にいると、近所の人と話をする中で、田んぼや高齢化のこと耳にする。
「この町で何か力になれないかな」
って最近は思うようになって。
農業もしたいなって思っている。人間が生きていくための根源だしね。
こういう変化は柏崎に来てみないと起きなかったことかな。
「22歳で独立」を目標にやって来たけど、それはゴールじゃなかったなと思ってる。
photo:ヒロスイ
※記事中の4枚目の写真は岩間さんより提供。横浜店の店内写真。