別アングル 岩間 貴寛 episode.2

別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。

岩間 貴寛

東京都町田市生まれ。株式会社Dan、株式会社BOND代表。
横浜のWAEN dinning & hairsalon、HIBA by WAENを経営する。
柏崎市別俣にある古民家を買い取り、自ら改装して2021年7月にWAEN dinning & villaをオープン。今後、同じ建物で宿泊施設もオープン予定。

「ここで長く働くことはないかもしれない」
そう考えた最初のきっかけは給料のことだった。
スタイリストデビューをして本格的に美容師として働き始めた二十歳前の頃。
所得についていろいろと興味が出てくるようになった。
「みんなどれくらい給料をもらっているのだろう」
興味が出て調べてみると、周りに比べて自分の所得が低いことがわかる。

「いまの生活って…どうなんだろう」
給料は安いのに仕事ばかりして、時間がない。
最初のうちは、やっと美容師として働けたという思いから辞めようと思わなかったが、仕事に慣れてくると疑問を感じるようになる。

一緒に働いている上司の姿も印象的だった。
給料はこれくらいもらっている…家族とうまくいっていない…
近くで見ていれば、働く姿から見えてくる。
20年後の自分の姿を重ね合わせる。
たとえ店長になったとしてもてっぺんは見えている。
40歳になったときに、絶対そうはなっていたくなかった。

転職を考えてみたものの、美容師以外に何もスキルが無いことに気づく。
中学卒業してすぐ働き始めた。学歴に「高卒以上」とあればバイトにも応募できない。
転職はかなりハードルが高いと感じた。結局、この時は具体的な転職活動はしなかった。

一方で、このまま一生雇われのままいるつもりもなくて。
20歳前後というと、まわりの友達はまだ学生が多い。
友達が大学を卒業して働き始める22歳には、独立して次のステージに進んでいたかった。
先に働き始めてたのに、後から働き始めた友達が自分より稼いでいたら悔しいから。

いい車に乗りたい。タワマンに住みたい。
別にそんなことじゃないんだ。
やりたいことをやりたいって思ったときに、できるようになりたい。
やりたいことがあったときに、お金がないから、時間がないから、できない。
そんなふうになりたくなかった。
いまのまま雇われた美容師では時間もお金も厳しい。
独立して何かやれば、お金も時間も手に入るはず。

そしてスタイリストデビューしてすぐに気が付いたことがある。
俺はいわゆる「カリスマ美容師」にはなれないということ。
これも、この店で長く働かないと思ったもう一つの理由。

自分で言うのもなんだけど、割と要領は良いほうだ。
ものを覚えるのが早い。
一方で、何か一つのことをやり遂げることに関してはあまり得意ではない。
7~8割くらいできるようになると、他に興味が行ってしまう。

美容業界の一線にいる人たちは、本当に美容師という仕事が好きだ。
美容師としての技術を提供することに、価値を感じているし向上心がある。
業界で上に行くのはそういう人たち。
その人たちに比べると俺のスタンスは180度違って、美容師は目的に到達するまでの手段の一つでしかなかった。

だからこそ今の自分が独立という戦いで武器として使えるのも、美容師だと思った。
生きる手段として、一番時間を投資してきたのが美容師だったから。
他のことをやろうとしたって、その事にたくさん時間を費やしている人が既に居るワケで。
新しいことを始めても、その人たちに勝てるかと言われたら、たぶん勝てない。
独立を考えたときに、結局頼りになるスキルは美容師以外にないんだ。

スタイリストデビューしてから2年、上司に説得されながらも退職。
独立に向けて一歩を踏み出した。

episode.3へ続く

photo:ヒロスイ

2021年10月9日 16:22

カテゴリー / まちから

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投稿者 / yajima