別アングル 岩間 貴寛 episode.1

別アングルは柏崎の魅力的な人を取材して、その人の情熱や生き方を紹介するインタビュー記事です。
お話を伺うのは、仕事、遊び、趣味など、何かひとつのことに打ち込む人たち。動機は、好きだから、楽しいから、気が付いたらやっていたからと、いたってシンプル。
それが結果として人を喜ばせ、地域のためになっている。
別アングルから見るとまちづくりになっている。
魅力的なひとの存在に気づけば、またさらに柏崎が好きになれるはず。
そんな想いでこの記事を書きます。

岩間 貴寛

東京都町田市生まれ。株式会社Dan、株式会社BOND代表。
横浜のWAEN dinning & hairsalon、HIBA by WAENを経営する。
柏崎市別俣にある古民家を買い取り、自ら改装して2021年7月にWAEN dinning & villaをオープン。今後、同じ建物で宿泊施設もオープン予定。

「将来はプロ野球選手になるんだ」
最初は友達と遊びで始めた野球は、軟式野球から硬式野球になる中で、プロを目指すようになっていた。
ポジションはキャッチャー。時代はまだ当たり前のように根性論の世代。
一日3試合をするようなときもあった。

ハードなプレーに加え、ストレッチもしない。
無理がたたったんだろう。あるとき太ももを肉離れした。
かばうようにプレーし、さらにけがは悪化。両足とも肉離れをした。
完治するのに一年もかかるという診断に、自分はもちろん親もショックをうけた。

中学生になると夜のまちで遊ぶようになる。
野球で鍛えた身体のおかげで体育祭では目立つ。
するとワルい先輩に声をかけられるようになる。
誘われるまま一緒にやんちゃをするように。
けがで部活には行けない。エネルギーは有り余っている。
「あいつ、ケンカ強いらしい。行こうぜ」
今思うとくだらないけど、そんな話題で盛り上がる。
学校はサボり、家にも帰らない日々。

中学2年のとき、悪いことを重ねた結果が自分に返ってきた。
家に帰らない息子に母親も精神的に参っていた。
「このままじゃいけない」
そう思って悪いことはやめたけれど、相変わらず学校には行きたくなくて。
高校には行きたくない。中学を卒業したら働きたい。

中学生と言えばファッションに興味が出てくる頃だ。
おしゃれに目覚めて姉が通っていた表参道の美容室に行くようになった。
美容師との世間話で進路の話題が出る。
「美容師、やってみれば?」
カッコいいから。モテそうだから。
それに…働きたいとはいえ、力仕事はいやだったから。
そんな動機で美容師を目指し始める。

中学生で就職活動をする人間は少ない。
中学校の卒業式の日になっても、進路は決まっていない。
卒業式を終え、やっと始まる就職活動。
履歴書を持って、とにかく片っ端から美容室をまわる。
アポも取らずにガンガン突撃していく。
100軒以上回ったんじゃないかな。それでも採用に至らない。
気が付くと、春はとっくに過ぎて夏も終わりに近づいていた。

うまく行き始めたのは、付き合っていた彼女がきっかけだ。
彼女は自分が通っていた美容室を紹介してくれた。
彼女が通う店の店長から社長に話が行くと「面白いから会ってみよう」と面接してもらえることに。
20店舗以上を経営するその社長は、自分と同じような境遇の人だった。
長く先の見えない就職活動を終え、ようやく美容師見習いとして採用された。

就職と同時に家を出て一人暮らしを始めた。
美容業界は厳しい。お店の営業前から練習をする。一日中立ちっぱなしで仕事をして、終業後にまた練習があって終電で帰る。
公休をお店に買い取ってもらって休みの日も働く。とにかく働きまくる。
就職するまではずっと遊んできてたからね。すごいギャップだった。

縦社会の体育会系のノリの中、叱られることも多い。でもいろんなことを知らない分、それが自分のベースというか、基礎になる。野球で鍛えられた身体がそれを支えてくれる。厳しく指導されるのも体力的な負荷も、免疫はある。社会に出て最初に身を置いた環境が厳しかったことは、今では財産だ。

美容師見習いとして働きながら通信の学校に通い、国家試験に合格。
その会社では最年少だったんじゃないかな。
18歳でスタイリストとしてデビューする。
普通は18歳で高校を卒業して、専門学校に通ってからお店に入ってアシスタントを経て
やっとデビューだからね。5年分くらいショートカットした感じだった。

しかし、スタイリストデビューして間もなく
「自分はここで働き続けることはないかもしれない」
と思い始める。

episode.2へ続く

photo:ヒロスイ

2021年8月16日 20:27

カテゴリー / まちから

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投稿者 / yajima