社会を良くする挑戦者たちvol.12

被災体験が生んだ「いのちつなぐラジオ」の挑戦
製造技術のまちの力を集積し、最終製品を創る意味と

 中越沖地震や東日本大震災の影響で、3度の運転停止を経験している柏崎刈羽原子力発電所の立地自治体である柏崎市は、原子力発電所に大きく依存しすぎない経済産業構造の構築を目指して議論する場「明日の柏崎づくり事業」を2012年からスタートさせました。その事業に最年少の若手として参加していたのが、竹内代表です。明日の柏崎づくり事業では、原子力発電所の問題だけでなく、エネルギー全般や産業、雇用や暮らしなど、様々なテーマで意見交換を行っていきました。大きな転機になったのは、事業がはじまって3年目に開催したシンポジウム「生き残りをかけて〜柏崎の産業のこれから〜」。パネラーとして参加していた前中小企業庁長官である日揮株式会社の鈴木正徳さんの「柏崎で何かやりたい若者がいるなら、僕は一緒にやりたい」という発言に感化された竹内代表は、翌日には鈴木さんに連絡をとり、実際に行動するための勉強会を開くことになりました。

 はじめは、当時注目されていたメタンハイドレートの勉強会からはじまった会も、次第に地域の抱える課題など、よりリアリティのある問題提起が沸き起こってくるように。その中で出てきたテーマのひとつが、2020年頃に再整備される防災行政無線についてでした。2015年3月には、防災行政無線のプロジェクトを1つの核に、地方創生に資する具体的な成果を目指す任意団体「明るい柏崎計画」が立ち上がりました。

 明るい柏崎計画は、竹内代表の想いに共感した株式会社イシザカの石坂社長、株式会社テック長沢の長沢社長の3人が共同代表をつとめ、市内約30社で構成されています。柏崎の若手経済人が集い、若者の力で新しい価値観や具体的な利益を生み出したい、というコンセプトに共感する仲間の輪が広がっています。明るい柏崎計画では、「地消地産」にこだわり、自分たちの地域で使用・消費される様々なものを地域内でつくることができないか、という課題に注力しています。
 防災行政無線が流れるラジオをメイドイン柏崎でつくる「いのちつなぐラジオプロジェクト」も、この「地消地産」の考え方からきています。「今まで地方で使われてきた身近なものの多くは大手メーカーの製品を使ってきていますが、柏崎にしかできないものを自分たちの手でつくることが大事なのではないかと考えました。」と長沢社長。

いのちつなぐラジオの試作機。こだわりが随所につまっている。

 いのちつなぐラジオのプロダクト開発には、中越沖地震の被災地である柏崎の知見が活かされています。「地震の時に、防災行政無線は持ち出せなかったけど、避難所などでは多くの情報をラジオから得ていたよね」というメンバーの実体験から、プロダクトのコンセプトを創り上げていきました。メイドイン柏崎への徹底的なこだわりも特徴で、内製率は9割を超えています。「柏崎市はもともと部品産業の集積地。ラジオ生産には、基板設計・基盤実装・金型設計・樹脂成形・組み立て・品質検査など様々な工程があるが、そのほとんどを柏崎の会社でまかなうことができる。市内で使うものを市内の総力をあげてつくることに、大きな意味を感じています。」と竹内代表。

 昨年11月には、いのちつなぐラジオの完成報告会も開催し、オール柏崎で挑戦してきた「いのちつなぐラジオプロジェクト」のひとつの成果が生まれました。こうした地方の新しいイノベーションを生み出す取り組みが、地方創生の本質であり、これからの地域に必要とされています。今後の明るい柏崎計画の取り組みにも是非ご注目ください。

2018年11月26日に開催した完成報告会の様子。
竹内一公さん

明るい柏崎計画共同代表。株式会社竹内電設代表取締役。高校卒業後、東京の大学に進学。就職超氷河期を戦い抜き、静岡のベンチャー企業に就職。父親の会社を継ぐために新潟県に戻ってきて、2年ほど電気設備業の会社で下積みした後、現在の職場へ。様々な公職や委員を経験する中で、少しずつ地域の課題解決への関心が深まったことが、明るい柏崎計画立ち上げにもつながっている。

明るい柏崎計画 住所:新潟県柏崎市田塚3丁目3番38号(株式会社テック長沢内)
電話番号:0257-24-5551
Facebook:https://www.facebook.com/kashiwazaki.akk

※この記事はシーズン柏崎2019年1月号「社会を良くする挑戦者たち vol.12」に掲載されたものです。
http://seasun-kashiwazaki.com

2019年1月13日 12:43

カテゴリー / あいさ

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投稿者 / hirata