社会を良くする挑戦者たちvol.10

5分100円から始まる、超高齢社会を支える担い手
高齢者や障がい者及びその家族が、安心して暮らせる社会へ

 国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えた日本。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、要介護、要支援認定者数も65歳以上の2割に当たる716万人、そのうち252万人は要介護3以上と予測されています。介護人材は全国で約37万人も不足すると言われており、柏崎も例外ではありません。

 柏崎ポーターズの小池勝己さんは、5分100円で日常生活の困り事を解決してくれる「御用聞き」のサービスを提供し、高齢者や障がい者のいる世帯へのサポートを行っています。「御用聞き」とは、高齢者や障がい者が暮らす家へ向かい、5分100円で電池の交換、ビンのふた開け、電子機器の接続、買い物などの日常生活の「困り事」から、要介護者の深夜の見守り、付き添い移動支援、話し相手など、孤立しがちな高齢者や障がい者とその家族の「困り事」をお手伝いすることです。

 活動の原点は小池さん自身が働きながら、17年間両親の介護をしてきたことにあります。小池さんの両親の介護が始まったのは介護保険制度が施行された2000年。制度には高齢者を家族などの個人ではなく社会全体で支えるという理念が掲げられています。しかし、「介護生活の中で起きる些細な困りごとは、公的な介護保険のサービスではまかなえない部分がたくさんあった。」と小池さんは話します。ヘルパーが来るのは週の半分。その日以外の食事や洗濯、オムツ交換、夜間の見守りなど、消防の仕事で朝方に帰宅してから二人の介護をする生活は肉体的にも精神的にもギリギリな状態でした。
 「1時間見てもらうだけでいい。公的な介護保険のサービスでまかなえない部分を少しでも助けることが出来れば、家族や本人の負担が減るのではないか。家族の負担やストレスが減ることで高齢者本人への対応も変わってくる。小さなことだけど自分が貢献できる部分があるのではないか。」という思いから「御用聞き」を始めました。

 小池さんは以前、テレビ台の戸がはずれてしまったから直してほしいという御用聞きを頼まれたことがありました。小池さんにとってはたった5分で終わる仕事。しかし、その人からすれば、その戸を見るたび、病で倒れた夫の看病のことや直したいのに直せない自分へのフラストレーションが溜まり、心の負担となっていました。直し終わった戸を見て、安心した笑顔で「ありがとう。この戸を見るたび、ずっと辛かった。これで安心できる。」とお礼の言葉をもらったそうです。「物が直っただけでなく、その人の気持ちが明るくなる。」と小池さんは言います。誰かに頼めばすぐに解決する問題かもしれません。でも、その「誰か」がいない人もいます。また、頼めるとしても家族にはこれ以上負担をかけたくないから頼めない人もいるかもしれません。それが5分100円のサービスとしてあれば、気楽に「困り事」を頼むことができ、会話の中からその人の持つ本当の「困り事」(必要としている事)が見えてくるのです。
 7月からは御用聞きに加え、各所への移動ができるようにとタクシーの二種免許の資格も取得し、介護タクシーのサービスも開始します。「介護タクシー」と「御用聞き」の混合サービスで活動の幅を広げています。

車内には、最新のリクライニング型車いすも用意されており、車いすを持っていない人でも利用ができる。

 資格や免許を必要としない「御用聞き」は、大学生から定年後の人まで幅広い年代の人が行うことができます。多くの高齢者、家族の負担に対応していくため、「御用聞き」の担い手も募集しています。
 これから更に増加する高齢者と家族が、優しく暮らすことができる社会へ。小池さんの挑戦は、始まったばかりです。

小池勝己さん

柏崎市出身。昨年3月に退職するまで37年間、消防署に勤務し、そのうち平成11年からは救急救命士として従事する。その経験から培った判断力や観察力、豊富な知識を生かし、「御用聞き」のサービスを行っている。今年7月からは「介護タクシー」の事業をスタート。二つの混合サービスを展開する。

柏崎ポーターズ
住所:新潟県柏崎市大字与三1579番地
電話番号:0257-24-9379
営業日:不定休
営業時間:8:30〜18:00 ※電話での承り時間の目安ですので、仕事時間はそれぞれの依頼によります。
料金:御用聞き 5分100円~
   介護タクシー 初乗り680円~

※この記事はシーズン柏崎2018年7月号「社会を良くする挑戦者たち vol.10」に掲載されたものです。
http://seasun-kashiwazaki.com

2018年7月11日 13:35

カテゴリー / あいさ

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投稿者 / hirata